---

■囚われのハクアを助けたのは、敵かに思えたドクロウ？
FLAG 161「脱出」

─新地獄、拷問部屋─
保安部＝ヴィンテージを倒したハクアとドクロウの二人だったが…。
ドクロウ「遅くなってすまん、ハクア」「さあ、新地獄から出るのだ」
ハクアに謝るドクロウだったが、怒りはおさまらない。
ハクア「室長、何しに来たのよ…私のことクビにしたくせに!!」
怒声に困り顔で答える。
ドクロウ「すまんなぁ…私は公式にはヴィンテージの味方ってことになってるのだよ」
ハクア「公式？」
ドクロウ「それより、逃げる前に記憶管でこいつらの記憶を消せ」
「服も着ろ、その姿で逃げたら別の罪で捕まるぞ」
保安部制服に身を包むハクアと段ボールに潜むドクロウ。
逃走ルートについてドクロウは説明する。
駆け魂隊でなくなったハクアは正規ルートで地獄から出ることが出来ない。
そこでゴミ捨て場から浮島の下、旧地獄の地表に降りそこから人間界に渡る裏ルートを
使うというのだ。
アルマゲマキナの残留魔法で10分と居られる場所じゃ!?と驚くハクアに、だからこそ追
手がかからないとドクロウはいう。

─旧地獄、地表─
地表の川にはドクロウ作の小舟が浮かんでいた。残留魔法による瘴気の対策にファンタ
ジーなシェルターが張られている。
シェルターに入るハクア。それを見届け、ドクロウは外で船をこぎ出した。
ハクア「室長も中に入らないの？」
ドクロウ「私は元からアルマゲマキナで体を無くしておるしな…」
「作り物の体には空気の悪さなど関係ないさ」「これで境界まで行けば…外に出られる
」
ハクア「要は密出国ってこと…？まるで犯罪者ね…」笑いを堪えきれない、といった様
子で口元を押さえるドクロウ。
ドクロウ「いや～反逆罪で解雇だしマジ犯罪者だよ～☆」
ハクア「クビにしたのお前でしょ！」
ドクロウ「すまんって言っておるだろ～～、こっちもまだ流れを見てる状態でなあ」
声を荒げてツッコんだものの、ハクアはすぐにうつむく。
ハクア「もうわかんないわよ…何を信じていいのか」「正しいと思うことしても、なん
にもうまくいかない…」
意気消沈のハクアに声をかけるドクロウ。

「…食い止めなければ」「ハクア、ヴィンテージと闘うのだ」

だが、ハクアは顔をあげようとしない。
ハクア「ムリよ、私に何ができるっていうの…？」

─出獄ゲート─
人間界に帰ろうとするシャリアの姿があった。すると、そこに声をかけてくる人物が。
ノーラ「人間界帰んの？私も今から帰るところよ──」
シャリア「ノーラ…」
いたくフレンドリーな態度のノーラであった。
ノーラ「おみやげいっぱいねぇ」
シャリア「これだけが楽しみだからな」
ノーラ「で…」浮かべた笑みの雰囲気が変わる。
ノーラ「保安部にハクア売ったの、あんたでしょ」顔色が一変するシャリア。
シャリア「……」
ノーラ「大丈夫、誰にも言やしないわよ」
取り繕うように弁解の言葉を口にするシャリア、その口調は澱んでいる。
シャリア「う、売ったなんて…ハクアは最近持ち場をよく離れてるって言っただけだよ
？」
「あの辺りの地区長を一人異動させたいって…言われたから…」
ノーラ「ヴィンテージに？」核心をつくノーラ。

憂鬱な表情のシャリア、対してノーラは。
ノーラ「世の中の風向きばっかり気にして、ツノなしの学校あがりは大変ねー」「あー
いいとこの生まれで、良かった(ハート)」
瞳に星を浮かべ、満面の笑み。シャリアの顔がさらに陰る。
ノーラ「あ、ハクア、懲戒解雇になったみたいよ。じゃーねー」
軽い調子でハクアの処遇を伝え、去って行くノーラ。残されたのは、しょげた様子のシ
ャリアただひとり。

─旧地獄、地表─
ドクロウ「ハクア、確かに今のお前は何もない」
「駆け魂隊でもなければ、羽衣もない」
「ついでに家柄もない。ツノもない。カネもコネもない。バカ正直なだけで協調性もな
い。空気も読めない」
ないない尽くしの酷い言われようだった。
ハクア「なんなのよ！」
さすがにたまらず、ハクアは顔をあげる。
ドクロウ「だが、努力で一番になった」
ドクロウは静かに告げる。
「今まで『証の鎌』は家柄の高い悪魔しか取れなかった。成績優秀だから首席、という
わけにはいかなかったのだよ」
「しかしお前は成績で圧倒して、自分自身の力で首席をとった。魔学校の長い歴史で、
初めてのことだったのだ」
船が突如として川から宙に飛び出し、そのまま旧地獄の空を舞ってゆく。
ファンタジーな雰囲気の中、ドクロウの言葉は続いた。
ドクロウ「かつて地獄を染めた『悪』と『正義』が、地獄の地を誰も住めない土地にし
た」
「その後作られた新地獄も、一皮向けば昔と何も変わっていない…」
杖のような何かを取り出すドクロウ。
ドクロウ「お前のような者が上に立つ世、それが私の夢だ…!!」「ハクア、自分の力で
切り開け」
取り出した何かは『証の鎌』だった。それをハクアに差し出す。
ドクロウ「お前は新地獄の、新しい未来だ!!」
ドクロウの強い言葉を受け、再び『証の鎌』を手にするハクア。その顔には覇気が戻っ
ている。
ハクア「わかりました」「私…新地獄を守ります!!自分自身の力で…!!」

─新地獄、上空─
人間界への帰路、物思いにふけるノーラ。
ノーラ(シャリィの話によると、クビになるのは誰でもよかった…ハクアじゃなくても
よかった…)
(と、なると、ハクアたちの女神集めにヴィンテージは気づいてない…？)
(目的はヴィンテージを舞島市に集めること…なんのために？)答えは出ない。

─舞島市─
手の平に小さな斜めの傷跡。カッターが滑り、その傷跡と合わせて× を描くように傷を
作る。
そして中心にカッターを突き刺す。吹き出す血。
「あ、あぁ!!」それまでの無表情から一変、紅潮した顔に。
朝の平和な公園で自傷行為にふけるヴィンテージ幹部、リューネであった。傍らの通信
機から大声が漏れる。
？「リューネ、聞いてるか」「今回こそ、命令厳守だぞ！お前しかいない」「ハクア・
ド・ロット・ヘルミニウムがクビになった。次の地区長はお前だ！」
リューネ「やだ、面倒臭い」
即答であった。無論声の主は、それで引き下がるはずもない。
？「お前、幹部だろう！勝手は許さん！」
「ヴィンテージにとっても今は最も大事な時だ…」「守りを固めねば…」
ベンチに座ったままのリューネは地図を見つめながら告げる。
リューネ「ねぇ、このハクアって娘の行動ログ、全部ちょーだい」
リューネ「全部よ全部、ちょっと気になるとこあるのよ」
？「気になること…」
リューネの手の地図には、光点がいくつか浮かんでいた。
リューネ「わかったわ、私この娘のところに入る。辞令作ってちょーだい」心変わりし
たリューネ。何が彼女の心を動かしたのか。

ハクアが洞窟のような場所を通り人間界への道を急ぐ。
それに被さるドクロウの独白。
ドクロウ「『善』も『悪』ももはや何も為さぬ」「今必要なのは」「強さだ」
─舞島学園─
「ふわぁ…」アクビと共に登校する桂馬。
飾り付けられた校内、楽しげな生徒達の声。垂れ幕に記されたのは『舞島学園芸術文化
祭(前夜祭)』の文字。
金曜日の、そして舞高祭の始まりだった。

■ヴィンテージの陰謀うずまく中、前夜祭！

--

--
--
※ 發信站: 批踢踢實業坊(ptt.cc)
◆ From: 118.168.117.159
※ 編輯: alan99          來自: 118.168.117.159      (10/08 19:09)

--